【記者レポート】ゲームを超えた新大陸:なぜ今、企業は『フォートナイト』に熱視線を送るのか? マーケティング最前線を実例と共に解説
- 邦博 山田
- 4月24日
- 読了時間: 5分
かつて単なるオンラインゲームとして世界を席巻した「フォートナイト」。しかし今、その姿は大きく変貌を遂げ、企業が消費者と繋がるための新たな「大陸」として、マーケティング戦略上、無視できない存在となっている。なぜ、名だたるグローバル企業から国内の大手企業、さらには地方自治体までもが、このプラットフォームに注目し、投資を始めているのか。本稿では、その理由と具体的な活用事例を深掘りし、マーケティングの最前線で起きている地殻変動をレポートする。
なぜフォートナイトなのか? 企業を惹きつけるその引力
企業がフォートナイトに魅力を感じる理由は、単なる流行りという言葉では片付けられない、明確な戦略的メリットが存在するからだ。
圧倒的なユーザーベースと若年層へのリーチ力:
全世界で数億人と言われるプレイヤー数を誇るフォートナイトは、特にデジタルネイティブである若年層(Z世代、α世代)とのエンゲージメントにおいて、他の追随を許さないリーチ力を持つ。従来のマス広告では届きにくかった層へ、彼らが日常的に集う空間で直接アプローチできる点は、企業にとって計り知れない価値があります。
「クリエイティブモード」と「UEFN」による無限の表現力:
フォートナイトの大きな特徴である「クリエイティブモード」、そしてそれをさらに進化させた「Unreal Editor for Fortnite (UEFN)」は、企業が独自のブランド体験を自由に、かつ高度に構築することを可能にした。単なる広告表示ではなく、ブランドの世界観を反映したオリジナルのマップやゲーム、インタラクティブな体験を創り出せる。これにより、ユーザーは広告を"見る"のではなく、ブランドの世界に"没入"し、"体験"することができます。
"体験"を通じた深いエンゲージメント:
フォートナイト内でのブランド体験は、ユーザーの能動的な参加を促す。ゲームをクリアする、アイテムを探す、友人と協力するなど、"体験"を通じてブランドに触れることで、受動的な広告視聴に比べ、より深く、ポジティブなブランドイメージをユーザーの記憶に刻み込む効果が期待できます。
メタバースへの現実的な入口:
バズワードとして先行した感もある「メタバース」だが、フォートナイトはその概念を具現化する、最も現実的かつ大規模なプラットフォームの一つと目されている。企業はフォートナイトを通じて、本格的なメタバース時代の到来を見据えたブランドプレゼンスの構築や、新たなコミュニケーション手法の試行錯誤を、比較的低リスクで始めることができます。
マーケティング活用の実例:多様化するアプローチと狙い
実際に、国内外の様々な企業がフォートナイトをマーケティングに活用し、成果を上げ始めている。そのアプローチは多岐にわたる。
ブランドの世界観を体現・没入体験の提供:
Nike: 人気スニーカー「Air Max」の世界観を表現した「Airphoria」を公開。ゲーム内でスニーカーを探す体験を提供し、ブランドへのエンゲージメントを高めた。
Ralph Lauren: デジタルコレクションを発表し、ゲーム内アイテムと連動したリアル商品を販売。ファッションとゲームの垣根を越えた。
パンどろぼう: 人気絵本の世界観を忠実に再現した公式ゲームワールド「パンあつめゲーム」を公開し、親子層へのアプローチに成功。
商品・サービスのプロモーションと理解促進:
ドン・キホーテ: 「MEGAドンキ渋谷本店」を再現したマップ「ドン・キホーテ Prop Hunt」を公開。プライベートブランド商品に変身してかくれんぼを楽しむゲーム性で、楽しみながら商品認知を促進。将来的にはクーポン配布などリアル店舗への送客も視野に入れる。
コカ・コーラ: 新商品の世界観を表現した「Pixel Point」ワールドを展開。
地域・文化振興と新たな魅力発信:
京都府: 伝統工芸品(京扇子、京和傘など)に変身して遊ぶ「KYOTO PROP HUNT」を公開。若年層に伝統文化への興味を喚起。
東京メトロ: 銀座線の駅を再現したマップで、公共交通への親近感を醸成。
大阪・関西万博: 公式マスコット「ミャクミャク」をテーマにしたパルクールマップを公開し、万博への期待感を醸成。
企業ブランディング・人材育成:
長谷工コーポレーション: 建築デザインコンペの最優秀作品をフォートナイト内に再現。若手人材育成支援と、企業イメージ向上に繋げる。
成功の鍵と今後の展望
フォートナイトマーケティングは、もはや単なる一過性のブームではない。しかし、成功を収めるためには、いくつかの重要な視点がある
明確な目的設定: 何のためにフォートナイトを活用するのか(認知度向上、エンゲージメント深化、商品理解促進、来店促進など)を明確に定義することが不可欠だ。
プラットフォーム特性の理解: フォートナイトのユーザー層、文化、ゲーム性を深く理解し、"広告臭"を感じさせない、ネイティブな体験設計が求められる。
リアルとの連携: ゲーム内体験と、リアルな商品購入や店舗訪問、イベント参加などをいかに効果的に結びつけるかが、今後の重要な鍵となるだろう。ドン・キホーテのクーポン施策検討などはその好例だ。
継続的なアップデートと分析: フォートナイト自体が常に進化しているため、マップやコンテンツも継続的に更新し、ユーザーの反応を分析しながら改善していく姿勢が重要となる。
結論:マーケティングの"新大陸"への挑戦は続く
フォートナイトは、企業が新時代の消費者と繋がり、ブランド体験を革新するための強力なプラットフォームへと進化した。その活用方法は多岐にわたり、今後もUEFNの進化やクリエイターエコノミーの成熟に伴い、さらに多様で洗練された事例が登場することは間違いないと考えられます。企業にとって、この"新大陸"への挑戦は、もはや選択肢の一つではなく、未来のマーケティング戦略を左右する重要な一手となりつつあります。
Comments